一般の方へ
臨床試験について
①治験を含む臨床研究の分類
- 臨床研究とは:
- 病気の予防、診断や原因究明、治療方法の改善等のために、ヒトを対象として行われるすべての研究 。観察研究と臨床試験からなる。
- 臨床試験とは:
-
医薬品や医療機器、外科的手技などの治療を試験的に施し、有効性や安全性を調べる臨床研究。 注:臨床研究法における定義とは異なります。
- 観察研究:
- 新しい診断・治療法の開発等を目的として、通常の診療を受けた患者さんの血液・尿などのサンプル、カルテや検査結果を利用して調査・解析を行う研究。
- 治験とは:
- 臨床試験のうち、厚生労働省に「医薬品」や「医療機器」として認めてもらうことを目的として行う臨床試験。
<臨床研究に関する用語>
- トランスレーショナルリサーチ:
- 大学等で行なわれた基礎医学研究の成果を臨床応用するにあたって行う一連の研究。初期段階の臨床試験を含み、医師主導で行うことがある。
- 医師主導の臨床試験:
- 医師が主体となって、最適な治療法や新規の治療法、診断法を確立することを目的として実施する試験。
- 再生医療:
- 病気やけがで失われた臓器や組織を幹細胞などを用いて復元させる医療。
- 先進医療:
- 病院などで研究開発された最新医療技術のうち、将来的に保険診療への導入を目的として実施する医療技術。
- 製造販売後調査:
- 市販後の医薬品や医療機器の有効性及び安全性に関する情報の収集、確認または検証のために行う調査。
- 遺伝子治療臨床試験:
- 疾病の治療を目的として遺伝子または遺伝子を導入した細胞をヒトの体内に投与する臨床試験。
②治験や臨床研究のルールと倫理審査
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」という法律と、これに基づいて厚生労働省が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」等の規則を遵守して実施されます。
一方、治験以外の臨床試験に関しては、厚生労働省が定めた「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に代表される各種指針や臨床研究法という法律に則って行なわれます。
すべての臨床研究は、開始前に倫理性、科学性が確保され、適正に実施することが可能かどうかを該当する委員会(当院では医学部倫理委員会、認定臨床研究審査委員会または病院の治験審査委員会)で審査し承認された後、実施しています。
③医薬品・医療機器の開発から患者さんに届けられるまで
医療品の場合
第Ⅰ相臨床試験
「くすりの候補」が人に使用しても安全かを調べる最初の段階です。
少ない用量から投与し、安全性を確認しながら、順に予定する用量まで増量します。併せて、くすりの吸収・代謝・排泄の様子も調べます。
通常、少人数の健康な成人を対象として実施します(患者さんを対象として実施する場合もあります)。
第Ⅱ相臨床試験
この臨床試験では、比較的少人数の患者さんを対象として、「くすりの候補」に病気を治す効果がみられるか(有効性)、副作用はどの程度か(安全性)、またどのような使い方(投与量・投与間隔・投与期間など)が適切であるかを確認します。
確認の方法として、プラセボ(有効成分を含まず、見かけ上、有効成分を含む製剤と区別がつかないもの)や既に承認されている標準的な「くすり」との比較試験を行うことがあります。
第Ⅲ相臨床試験
この臨床試験では、より多くの患者さんを対象として、前の試験で得られた結果をもとに、有効性、安全性、および使い方を更に確認します。
確認の方法は、すでに承認されている標準的な「くすり」やプラセボとの比較をすることが一般的です。
医療機器の場合
④試験の方法
「くすりの候補」のもつ有効性と安全性を科学的に調べるため、様々な方法で試験が行われます。
代表的な方法には・・・
- 無作為化 比較試験(または、ランダム化比較試験)
- 二重盲検法
などがあります。
無作為化比較試験とは?
第Ⅱ相・第Ⅲ相の臨床試験では、患者さんを無作為な方法(くじ引きのような方法)で「くすりの候補」を使用するグループと、「それ以外のくすり(プラセボやすでに市販されているくすり)」を使用するグループに分け、くすりの有効性と安全性を調べます。
これはグループ間のかたよりを少なくして、くすりの有効性と安全性を正しく評価するために行います。
二重盲検法とは?
人はくすりの成分を知ってしまうと、先入観が入ってしまい、身体に現れた変化がくすり本来の作用なのかどうか客観的な情報が得られなくなることがあります。
そのために、「くすりの候補」と「それ以外のくすり」との比較試験が行われます。その際、試験期間中はどちらのくすりを使用しているか医師と患者さんの両方にお知らせしないで客観的に評価する方法を二重盲検法といいます。
⑤治験に参加することのメリットとデメリット
治験に参加することには、有利な点(メリット)と不利な点(デメリット)があります。
有利な点
*治験では、より新しい治療法を受ける機会を得ることができます。
*試験期間中は、副作用等の早期対応のため、通常よりも多くの診察と検査を受けていただくことがあります。このため医師は患者さんの体調の変化に気が付きやすく、より細やかな治療を行うことができます。
*また、治験に参加いただくということは、同じような病気と闘っている患者さんのためにもなり、将来の医療の進歩に貢献することになります。
不利な点
*「くすりの候補」では、予測しない副作用がみられたり、標準的な治療法よりも副作用の症状が重かったり、対処の仕方が難しい副作用が出たりする可能性もあります。
*標準的な治療法でさえも、すべての患者さんに有効とは限りません。これと同じようなことが「くすりの候補」にもいえます。
*試験期間中は「くすりの候補」の有効性や安全性を確認するため、普段使用しているくすりが使えないことがあります。
治験に参加されると・・・
治験に参加された場合は、次の点を守ってください。
- お薬は医師の指示に従って使用してください。
- 特別な事情がない限り、医師から指示された来院日を守ってください。
- 普段と違った症状を感じた時には受診日に関係なくご連絡ください。
- 他の病院を受診される場合や受診された場合もご連絡ください。また、その時は他の病院の医師に治験に参加していることを伝えてください。
*治験に安心して参加いただくために・・・
東大病院では、臨床研究コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)が治験のお手伝いをしています。看護師や薬剤師、検査技師であるCRCは参加する患者さんに不利益を与えないように、また医薬品や医療機器に関する法律や規則(GCP)に従って治験が正しく行われるように、様々な業務を行っています。
(主な業務内容)
- 治験の内容の説明、お問い合わせの返答や相談
- 治験中の「くすり」についての情報収集と提供
- 来院日のお知らせ、検査等の手配
⑥治験の説明と同意
治験の説明
文書を用いてご説明します。
治験に参加するか否かについては、その場で決めずに文書を持ち帰って十分に考えてから決めることもできます。
治験に関しての分からないことや確認したいことなどを、納得するまで担当の医師やコーディネーターへ質問することができます。
治験への参加は自由です
治験に「参加する」か「参加しない」かは、だれからも強制されることなく、患者さんの意思で決めていただきます。
治験に参加しない場合は、他の治療法で最善の治療を行います。
また、治験薬の使用開始後でも、患者さんの意思でいつでも治験を中止することができます。ただし、治験によっては急に中止することが患者さんに危険をもたらすことがありますので、あらかじめ、よくご理解をお願いします。
治験をお断り頂くことで治療上の不利な扱いを受けたり、不利益を被ることはありません。